嘘と微熱と甘い罠
オフィスに戻ると。
隣のデスクでパソコンのキーボートを叩いていた相良を。
半ば強引にフロアの端っこに連れていって、今夜のお願いをした。
「相良っ、お願い!!」
「…いいけどさ。お前はそれでいいの?」
顔の前でパンッと手を合わせる私に、相良は少し困った顔をすると。
ため息混じりに言葉を吐いた。
「…笠原さんからの誘い、なんだろ?」
チクン。
相良の言葉に。
針でつつかれたような、地味に痛い感覚を胸の奥に感じた。
…なんだろ、この痛みは…。
「…うん。でも、相良が一緒がいいんだ」
「…ふーん」
胸の痛みを無視した私の言葉に。
相良はほんの少し、ニヤリと口角を持ち上げた。
…あれ、今…。
なんか、イヤな予感が…。
背中を走る悪寒が怖い。
そして。
口元だけ笑ってる相良も怖い…。