嘘と微熱と甘い罠

何を言えばいいのかわからなくて俯いてしまう。

なにかを言葉にすれば。

そこからｽﾞﾙｽﾞﾙと知りたくもないことも知ってしまいそうで。

このまま目を逸らしてるわけにもいかないのはわかってる。

でも。

まだそれを言葉にするだけの覚悟は用意できていなかった。





「…また笠原さん絡み？」

「……ｯ…」





呆れたようなため息混じりの相良が発した言葉に。

答えられなかったことが、それを肯定しているようなものだった。





またなにか言われる…。

「だから止めとけって…」とか「またﾄﾞﾀｷｬﾝ…」とか。

今までに何度も言われてるそんな類いの事を。

また言われるんだろうな、と。

そう身構えたとき。





「う゛…っ…!?」




ｸﾞｲｯ、と。

相良は私の両頬を片手で軽く掴み。

半ば無理矢理顔を上げさせた。