嘘と微熱と甘い罠
…仕方ないじゃない。
“なにかある”んだから。
それが今までとは正反対のものだなんて。
目の前の不機嫌な顔は。
微塵にも思っていないだろう…。
私は相良から視線を外したまま。
自身を落ち着かせるために小さく息を吐いた。
…頬を掴まれたままで、ってのはなかなかマヌケな姿だけど。
「…黙秘権なし。ガッツリ話してもらうからな」
私のその姿が相良にどう映ったのかなんてわからないけれど。
眉間に刻まれたシワはそのままに。
頬を掴んだ手を緩めると、その手はそのまま私の頭にのせられた。
「ほら、行くぞ」
「え、ちょっ…待ってよ!!」
いつの間に支度を終えていたのか。
相良は自分のバッグを手にすると。
またポンポン、と私の頭に触れてからデスクを後にした。