嘘と微熱と甘い罠
「お前、マジでバカだろ!!」
「うー…気持ち悪…」
「あんなペースで飲めば悪酔いするに決まってんじゃねぇか!!」
相良くん、お願いです…。
頭が痛いんで頭の上でキャンキャン吠えないで下さい…。
お店を出たのはいいけれど。
自分で歩くのも儘ならない私の体を支えてくれる相良は。
かなりのご立腹だ。
そりゃそうだろう。
相良の忠告を無視したハイペースな飲酒。
いつもならお酒に飲まれることなんてないのに。
無理矢理上げたテンションのせいか、考えたくないことがあるせいか。
アルコールの回りも早かった。
…そして悪酔い…。
相良を私のペースに持っていくどころか。
自分が暴走してるなんて。
どうなのよ、これ。
自分自身に呆れてため息も出ない。
「相良ぁ…」
「なんだよ」
「気持ち悪…」
「ちょ、待てっ…いっ!?」
相良の焦った声は。
私の頭の上を素通りしていった。