嘘と微熱と甘い罠
目を大きく見開いて。
相良が驚いているのが私にもわかる。
「な、に言って…」
「キス、しようって言った」
「…お前、笠原さんどうしたよ」
「…相良としたい」
我ながら意味がわからないと思う。
言われた相良だって、怪訝そうな顔を見せてる。
でもこれが、今の私の素直な気持ちなんだ。
欲に任せて、流されて。
つきあってるやつがいるのに、どうしようもない。
そう言われたら、誰でも納得できる模範解答で反論なんてできない。
でも。
相良が与えてくれる熱は、甘くて焦れったくて。
もっと欲しくなる。
ただ、それだけだ。
視線を逸らさない私に。
相良はひとつ、ため息を吐いた。
そして、顔を近づけた。
「…したいけど、できない」
「え…?」
「…天沢のこと、傷つけたくないから」
相良のその一言は、私の思考をストップさせた。