嘘と微熱と甘い罠
“笠原さんがいる”
いくらそう思っても。
チラチラと浮かんでは消え、消えては浮かんで。
もうそれは思い込みにしかならなくて。
頭の中を占拠してるのは相良だと認めざるを得なかった。
ただの同僚、ただの男友達、そんなスタンスで今までやってきたのに。
突然やってきたこの感情は。
どうにも私の手には余っている。
「…コラボの話、聞いた?」
相良も残業なのか。
開いたままになっていたパソコンにまた向かい合う。
そして、カタカタとキーボードを叩きながら言った。
「あー聞いた。下着メーカーとだろ?男の俺には未知の世界なんだけど」
「先方がどんな案を持ってくるかわからないけど、メンズもありでしょ?」
「あんま需要はなさそうだけどな」
「コンセプト次第ってとこだね」
「だな」
お互いにパソコンに視線を向けたまま。
だけど私の意識は相良に向いている。