嘘と微熱と甘い罠
でも同僚は。
そんな私の真っ黒い感情になんて気付くはずなんてなく。
さっきよりも相良に少し近づいて話を続けている。
…今までこんなことなかった。
隣のデスクにいたって、行動はもちろん。
誰かが来たとか、会話とか。
そんなこと気にしたことなんてなかった。
それが、今はなんだろう…。
自分でも笑えるくらい、相良が気になる。
視界の端に入る相良を相手に。
心臓が勝手に反応して倍速に動き出す。
笠原さんに感じていたドキドキとは全然違う。
これってもう。
病気に近いんじゃないだろうか。
「やだー、相良くんてばーっ。アハハッ」
「みんなそんなもんじゃねぇの?」
会話に混ざって聞こえる笑い声に反応する私の醜い感情。
…止めてよ。
相良に近づかないで。
相良もその子に、笑いかけないで…。
「…じゃあ、よろしくねー」
「んー、了解」
それから数分して、同僚は笑みを浮かべながら相良に手を振ると。
この部屋から出ていった。