嘘と微熱と甘い罠
その震えは、私がケータイを手にする前に止まった。
ケータイの隅で小さく光る赤い光が、着信かメールの受信かを知らせている。
…たぶんメール、だよね。
私はケータイに手を伸ばすと、ディスプレイを確認して操作を続けた。
【今夜7時、いつものところで】
メールは笠原さんからのお誘いだった。
デスクの上の時計は6時半になるところ。
笠原さんに指定された時間には余裕で間に合う。
今までなら。
残業分は持ち帰ることにして、とっととあがってLet's go!!
…ってしてるところなんだけど。
そこまでして笠原さんに会いたい、と思ってないのは事実。
仕事あるからって、断ろう…。
とりあえず財布とケータイを手にすると。
席を立ってカフェスペースに向かった。