嘘と微熱と甘い罠

「…でさー…」

「…えー、そうなのー?」





カフェスペースには先客がいた。

でもそんなのはいつものことだし、お互いに気にもしない。

…ただね、場所が悪い。





「お疲れさまです」

「あ、お疲れさまでーす」





自販機の前で話し込む彼女らに声をかけると。

ススッと横にはけてくれた。

…話し込むのは勝手だけど、自販機の前でってどうなのよ。

それはマナー違反でしょ?

ブツブツ心の中で思いながら。

いつも飲んでるコーヒーを買い、窓際に行った。





ケータイを操作し、笠原さんに返信をする。

【仕事がつまってるんで行けません】

…なんて色気のないメールだろ。

用件のみのメールは、笠原さんのもとへ飛んでいく。





私はひとつため息を吐くと。

コーヒーを一口飲んで窓ガラスに背を預けた。




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