嘘と微熱と甘い罠
「じゃ、お疲れさん」
「お疲れー」
来たのは相良とよく来る居酒屋。
とりあえずビール、もいつも通り。
先に運ばれてきたビールのジョッキをカツンと合わせるのもいつも通り。
「課長がー…」とか「あの案件はー…」とか。
仕事の話をするのもいつも通り。
お酒も進むと話も進んでいく。
「…下着メーカーとコラボってことは、やっぱり下着がメインになるんだろうな」
「たぶんねー。あちらも初の試みみたい」
課長から受け取った資料と過去のコラボ案件。
それと、市場に出ているコラボ商品。
コンセプトを決めるのに役にたつかなぁ、と色々調べてみた。
まだ下着でいくのか違うものでいくのかわからないから。
そこは打ち合わせしてみて、だけどね。
「…なぁ」
「んー?」
「お前、笠原さんと別れないの?」
「はぁ!?」
唐突に。
ホントになんの前触れもなく相良は。
ジョッキに口をつけながら言った。