嘘と微熱と甘い罠

あまりに唐突な質問に。

思わず手にしていたジョッキを落としそうになる。





「な、にをいきなり…」





いや、いきなりじゃない。

“やめとけ”って何度も言われてる。

だけど。

“別れ”なんて言葉は、相良の口から出たことはなかった。

何を考えてそんなことを言ってるのかわからないけど。

…今は変な刺激を与えないでくれませんかね。

私自身、自分の気持ちをどこにどうすればいいのか。

持て余しているのだから。





…でも。

はっきり“別れない”“別れるつもりはない”と言葉に出して言えない時点で。

答えは出ているようなものなんじゃないかと思う。

別れを告げる勇気がないのか。

それとも。

自分が悪者になりたくないだけなのか…。





< 180 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop