嘘と微熱と甘い罠

私の身体は覚えてる。

相良の部屋に初めて行ったあの日。

あの日相良が私にくれた快感を。

相良の指が、どんな風に私に触れたのか。

頭じゃない。

感覚として身体に残っているんだ。

忘れられるわけないじゃない。

あんなの、初めてだったんだから。





それだけじゃないでしょ?

もう認めちゃいなよ、ね…?





私の中のもう一人の私が呟く。

…言われなくったって。

もう、認めざるを得ないわよ…。

それは、諦めにも似たものだったけど。

ストン、と胸の奥に落ちてきた。





「…どうする…?」





私を抱きしめている相良の腕に力が入る。

私はそっと、相良の背中に自分の腕をまわした。





「…相良の部屋に…連れていって…」





飲んでいるのはお座敷席。

一番角の一番奥。

衝立一枚向こうは賑やかな声でいっぱい。

だけど私にはもう。

トクン、トクンと少し速いけど心地よい。

相良の胸の音しか聴こえなかった。




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