嘘と微熱と甘い罠
私の伸ばした指先は。
頬に触れる前に相良にキュッと握られた。
そして。
相良はそのままそれを自身の唇に寄せた。
「“蓮”」
「え…?」
「俺の名前…呼んでよ」
熱と欲を含んだ相良の声と。
指先に感じる相良の唇の感覚。
“もっと、もっと”と欲している私の身体が抗えるわけもなく。
掠れてうまく出せない声を絞った。
「…れ…蓮…ッ」
初めて言葉にした相良の名前。
そして。
「…穂香」
初めて呼ばれた私の名前。
この世に生を受けてからずっと呼ばれている名前なのに。
なんだか特別なものに感じてしまった。
「穂香…」
「…ッ…!!」
指先にキスを繰り返しながら、相良は私の名前を紡いでいく。
それだけなのに、心臓をキュッと掴まれたように苦しくなる。
苦しい、けど愛しくて。
私はもう一度、相良を呼んだ。
「…蓮が、欲しい…」