嘘と微熱と甘い罠

「うーん…」





マウスでカチカチとクリックをしたり、ファイルを捲ったり。

パソコンの画面と過去の資料とにらめっこ。

今日の仕事は、出社するなり言われた課長からの一言から始まった。





―「コラボの件、週明けに先方と顔合わせするから。こっちから提示するコンセプトの資料、用意しとけよ」―





…いやいや、コンセプト自体先方と相談しようと思っていたのですが…。

とは、さすがに言えなくて。

あー…、こんなことなら。

もっと早くに市場調査の予定をいれておくべきだった…。

ぼんやりと浮かんでいた物を資料に纏めあげるべく慌てている。

というのが、今現在の私の状況でした…。





慌ただしいスタートだったから。

昨夜のことなんてすっかり頭から離れてしまっていた私。

が、しかし。

身体というものはとっても正直で。

デスクを離れていて、朝から姿を見ていなかった相良が視界に入った途端。

心臓がバクバクと暴れ始めた。




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