嘘と微熱と甘い罠
「…顔、緩みすぎだから」
「え…?」
振り向いた私の目の前に現れたのは。
不機嫌そうに眉間にシワを寄せている相良。
相良は私の顔の横に手をついて、窓ガラスと私を挟み込んだ。
さらに、私の顔を覗き込んでくる。
ちょっ…近い近い近いっ!!
なんでこんなに近づく必要があるのよ!!
しかもなんでこんなに不機嫌なのよ!!
後退って距離をとりたくても、私の背後は窓ガラス。
どうにもならない。
そんな私に、相良は言葉を続けた。
「大方、昨夜の俺を思い出してるせいなんだろうけど。ココ、職場だから」
「わかってる?」と呆れたように冷たく放たれる相良の言葉が…痛い。
頭に、胸に、背中に。
容赦なくグザグサと刺さる。
「わ…わかってる!!」
わかってる、わかってるわよ。
言われなくたってわかってる。
公私混同するな、って相良がよく言ってたのは覚えてる。
…だからって。
あんな言い方しなくたって、いいじゃない…。