嘘と微熱と甘い罠
触れているか触れていないかわからないぐらいの小さな感覚。
だけどそれは、私の身体を疼かせるには十分な刺激だった。
「ちょ…っ、ヤダ…ッ…」
ここは職場。
そんな小さな刺激に溺れてしまうわけにはいかなくて。
それから逃れようと身体を捩るけれど。
相良は離してくれない。
それどころか。
「…エロい顔して…煽んないでくれる?」
「…ッ…!!」
唇を私の耳に触れさせながら。
直接脳内に囁いた。
耳に感じた感触と、昨夜の情事を思い出させるような相良の低い声に。
慌てて手で耳を塞ごうとしたけれど。
そんなの間に合うわけない。
「さが…ッ…止め…ッ…!!」
「煽ったの、お前の方だろ?」
「煽っ、てなんか…ッ…」
「俺は煽られてんだよ」
耳を喰む相良の唇から漏れる小さな吐息と。
時おり触れる柔らかく、湿った感覚に。
私はここが“職場”なんてことを頭から飛ばしてしまった。