嘘と微熱と甘い罠
午後5時30分。
デスクに置いてある時計も、部屋の壁にかかっている時計も。
終業の時刻を告げた。
「…よし」
今日も無事終わりました。
お疲れ様でしたー。
自分に対するそんな気持ちを込めて。
グーン、と伸びをした私に。
隣のデスクの相良が話しかけてきた。
「…残業?」
「今日は上がり。相良は?」
「んー、も少しやってく」
首をコキコキと鳴らしながら。
相良は椅子の背もたれに寄りかかった。
「そっか。頑張ってね」
残業していく相良には申し訳ないけど。
今日の私は残業なんてしていられなかった。
なぜなら…。