嘘と微熱と甘い罠
「…ったく、人使いが荒いんだからなぁ…」
まだ先方との打ち合わせだって済んでない。
とりあえずこっちから提示するコンセプト+αまでできてればいいんじゃないの?
先方の意見だってあるだろうし…。
それをデザイン部だの営業部だのって…。
話が飛び過ぎでしょうが!!
カフェスペースの自販機で相良に頼まれたコーヒーを買うと。
自分の分も買って窓際でプルタブを開けた。
ちょっとぐらい休憩させてもらったって、バチはあたるまい…。
窓の外を見ながら、冷たいコーヒーは心地よく喉を通るけれど。
私の口からはため息と愚痴しか出てこない。
「…なんだか、入社したての頃に戻ったみたい」
自分の案件、なんてなくて。
先輩たちのサブに入ってた頃。
仕事覚えるためにもひたすら雑用やってたことを思い出す。
「……………」
またため息が出そうになったとき。
背中から声が聞こえてきた。
その声はよく聞いた声であり…私が避けてきた声だった。