嘘と微熱と甘い罠

と、ふいに私の視線に気付いたのか。

笠原さんが不思議そうな顔をした。





「どした?」

「あ、や…なんでもないですっ」





ヤバい、ヤバい。

ついみとれちゃった。





今回のポスター担当は笠原さん。

私と相良が企画した商品の販促物、笠原さんが担当してくれるって言うから。

ちょっとは会う時間増えるかなー、とか。

一緒に残業とかできたりして、なんて、

邪な考えでいっぱいだったのに。

期待は裏切られた。





笠原さん本人と仕事、ってより。

笠原さんが送ってくるデータと仕事、と言った方がしっくりくるぐらい。

相良には「公私混同するな」って言われるけど。

ろくに会えないとどういう形でも会いたいんですよ。





なんて。

改めて思ったらため息が出そうになったその時。

隣に立つ笠原さんが少し腰を落とした。


< 21 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop