嘘と微熱と甘い罠
と、ふいに私の視線に気付いたのか。
笠原さんが不思議そうな顔をした。
「どした?」
「あ、や…なんでもないですっ」
ヤバい、ヤバい。
ついみとれちゃった。
今回のポスター担当は笠原さん。
私と相良が企画した商品の販促物、笠原さんが担当してくれるって言うから。
ちょっとは会う時間増えるかなー、とか。
一緒に残業とかできたりして、なんて、
邪な考えでいっぱいだったのに。
期待は裏切られた。
笠原さん本人と仕事、ってより。
笠原さんが送ってくるデータと仕事、と言った方がしっくりくるぐらい。
相良には「公私混同するな」って言われるけど。
ろくに会えないとどういう形でも会いたいんですよ。
なんて。
改めて思ったらため息が出そうになったその時。
隣に立つ笠原さんが少し腰を落とした。