嘘と微熱と甘い罠
どのくらい時間が過ぎたのかわからない。
何時間という単位なのか、それとも何秒という単位なのか。
でも。
私がどれだけ凹もうが、どれだけ落ちようが。
時間は皆平等に動いている。
「あ、いたいた。天沢ぁーっ」
離れたところから私を呼ぶお気楽な声が聞こえ。
膝に埋めていた顔をあげた。
近づいて来たのは同じ企画部、2課にいる先輩だった。
「…中村さん」
「相良が…って、天沢、どうした!?」
座り込んでいた私が中村さんに顔を向けると。
中村さんは目を見開いた。
…いや、人の顔見て…驚くとか失礼ですよね…。
なんてことが言える気力はなくて。
でも、私は眉間にしわを寄せることでそれを訴えた。
「あ、いや…っ。決して天沢の顔がおかしいとかじゃなくて…」
「…じゃあ、なんですか」
「…泣いているように、見えた…から…」
中村さんは私から視線を逸らすと。
言いづらそうに言葉を繋げた。