嘘と微熱と甘い罠

わざわざ探しに来てくれた中村さんと。

デスクでイラつきながら待っている(と、思われる)相良にコーヒーを買うと。

中村さんと私はカフェスペースを後にした。





「中村さん、すみません」

「だいたい相良も相良だよな。たまたま目が合った、ってだけで天沢のこと探しに行かせるんだから。俺、一応先輩なんだけど」

「中村さん、案件抱えてましたよね?」

「まぁね。でもそっちより遠藤課長からの無茶ブリの方が…もう溺れそう」

「あー…」





中村さんはガシガシと頭を掻きながら肩を落とした。

2課の遠藤課長。

あんな涼しい顔して、中村さんが肩を落とすくらい無茶ブリするんだ…

…恐ろしい。

私、2課じゃなくてよかったわ…。





課長から無茶ブリされて、相良にはパシリにされて。

お疲れさまです…。

心の中で中村さんに同情しながら。

私は中村さんと企画部に戻った。




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