嘘と微熱と甘い罠

「何か、あった?」

「…ないよ?」





嘘、ないわけない。

笠原さんのところに戻るつもりはないのに話もできてない。

それどころか。

笠原さんにつけられたキスマークに嫉妬をしてる。

誰が笠原さんに触れたの?

誰が痕を残したの?





でも。

カフェスペースで落ちてた時間は仕事上での無駄な時間。

これ以上私情で時間をロスするわけにはいかないって。

わかってるよね…?





「…遅くなっちゃってごめん。明日の打ち合わせ、しよ?」





自分で自分に言い聞かせるように言葉を発し。

相良の横をすり抜けるようにしてミーティングルームに入った。





「この企画任されたのに相良が突っ走ってるから何もわからないんだよー?」





さっきまでと変わらない所狭しと広げた資料。

開いてあるパソコンの画面には作りかけの資料らしきものが浮かんでいる。





「ちゃんとわかるように説明してよね…っ!?」





資料の1枚を手にとり、クルリと振り向いたとき。

私の視界は暗くなった。





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