嘘と微熱と甘い罠
バクバクバクと動くスピードを上げる心臓。
それに合わせて体温も上がる。
なんでこんなに近いのよ!!
お願いだから離れてよ!!
そう思っているのに、身体は動いてくれない。
目の前にある相良の視線に絡まれて。
ただただ動けずにいた。
「…何か期待してんの?」
「し、してな…っ」
「何があったか話せば期待以上のことしてやるよ?」
「な…っ!!」
「例えば…」
そう言って相良が耳元で囁いたのは。
私の想像の範疇を越えている、それはもう。
恐ろしいものだった。
ドキドキはしてるけど、期待なんてしてないから!!
だから、耳元でそんな恐ろしいこと言うのやめてください!!
そう言ってやりたい。
だけど。
相良の“甘さ”を知ってしまった今。
この距離感にそれを思わずにはいられない。
「…あ、そうだ」
こんな状況なのに。
私の頭の中が限りなくピンク色に近づいたとき。
何かを思いついたように相良がニヤリ、と口角を上げた。
…相良のこの顔。
絶対ろくでもないことを考えてるに違いない。
今にも悪魔を召喚させそうなその笑みに。
私の背筋にツツッと一筋の汗が走った。