嘘と微熱と甘い罠
企画と予感
「天沢」
午後からの打ち合わせに必要な資料をまとめていたら。
なんとものんきに…いや。
優雅にコーヒーを啜りながら課長が近づいてきた。
「なんですか?」
「打ち合わせの準備は大丈夫か?」
「…まぁ、なんとか」
「プレゼン担当は?」
「相良です」
私の言葉に。
課長はプリンターの前で資料のコピーをしている相良に視線を向けた。
相良のその横顔は、いつもと変わらず。
いや、いつもより不機嫌に。
眉間に皺を寄せ、唇をキュッと一文字に結んでいる。
「昨日も遅くまで残ってたよな。俺、別件でいないけど頑張れよ」
「…はい。頑張ります」
薄い笑みを浮かべ、再びスルスルとコーヒーを啜ると。
自分のデスクに戻っていく課長。
それに対して。
あぁ、こんなこと…前にもあった気がする…。
なんて思いながら課長の背中を見送り、苦笑いを浮かべた私。
そして。
手元にある資料に目をやると。
昨日のことが鮮明によみがえってきた。