嘘と微熱と甘い罠
―「…あ、そうだ」
何かを思いついたようにニヤリ、と口角を上げた相良に対して。
ゾクリ、と背筋に悪寒を走らせた私。
背中には冷たい壁。
目の前には悪魔を召喚させそうな微笑み。
数秒前に少しでも甘い期待をしていた自分を情けなく思い。
これからされる“何か”に恐怖を感じながら。
逃げ場のない私はギュッと目を閉じた。
が、しかし。
次の相良の行動は、私の予想とは大きく違っていて。
「…天沢、さっき“企画の説明しろ”って喚いてたよな?」
「え…?」
企画の説明?
確かに言ったけど…喚いてはいなかったと思うんだよね…。
それに。
今の流れでこの会話って…違和感丸出しでしょ。
予想外の相良の言葉を聞いて、私の頭の中に“?”がいくつも浮かぶ。
そんな私に。
相良は唇の端っこを持ち上げた。
「…説明、してやるからしっかり身体で覚えとけよ?」
相良が何を考えているのかわからないけれど。
その言葉に、またイヤな予感しかしなかったのは。
言うまでもない。