嘘と微熱と甘い罠
思いきり泣くだけ泣いて、吐き出せるだけ吐き出したかった。
だけど。
笠原さんと私のことを知っている人間は相良以外にいない。
その相良にだって…話せるわけない。
他の誰かに話したところで、話を聞いてくれるどころか。
思い込みもほどほどにな、と笑い飛ばされること間違いなし。
…もう、ひとりで落ちるしかなかった。
「………はぁ…」
膝を抱えて座り込んでからどのくらいたっただろう。
ダムが壊れたかのように溢れ出ていた涙も、泣きすぎてしゃくりあげていた体も。
徐々に落ち着いてくると、今度は違うことが気になってくる。
頬は涙の跡が乾いてつっぱってるし、泣きすぎて体が疲れを訴えている。
わけがわからなくなった後って。
なぜか妙に冷静な自分になれたりするんだよね…。
「…あと5分したら、戻ろう」
メイクは崩れて顔は残念なことになっているのは間違いない。
とりあえず、まずは洗面所に寄ってから戻らなきゃ…。