嘘と微熱と甘い罠
勢いと遭遇
「ではよろしくお願い致します」
「サンプルがあがりましたらまたご連絡致します」
―打ち合わせは無事に終わり。
先方も相良の案を気に入ったようで、食いつきがよかった。
担当は2人だと相良は言ったけれど、私はなにもしていない。
原案も出していないし、資料すら作っていない。
この案件に関しては相良にセクハラされた記憶と、放置された記憶しかない。
とりあえず話はうまく進みそうだし、この案件は相良に任せちゃえばいい。
そうしたら相良とも離れられるし、余計な気を使わなくてすむ。
相良は自分の企画として課長に報告できるし、私は他の仕事ができる。
いいことずくめ。
…だって、昨日の今日。
相良の顔をまともに見ることなんてできない。
仕事だから、と切り替えるのが精一杯で。
声すら聞くのが苦痛、というのが本音なのだ。
でも。
いつまでもこのままでなんていられない、なんてことは。
十分わかっている。