嘘と微熱と甘い罠
課長のその言葉の意味がわからなくて首を傾げる。
それに気づいたのか、課長は言葉を続けた。
「俺への報告も、救急車呼んだのも、付き添いも。みんな相良がやってくれたんだからな」
そうだったんだ…。
ただ付き添ってくれてただけかと思ってた。
そこも後でお礼言わなきゃだな。
でも、その場に一緒にいた笠原さんはあの後どうしたんだろう。
小さな疑問に首を傾げそうになったとき。
課長が思い出し笑いをしたらしく、いきなり吹き出した。
「な、なんですか!?」
「いやなー、昨日の相良の慌てっぷりがなー…」
「相良?」
「すごい勢いで近づいて来たな、と思ったら“病院行ってきます!!”っていきなり。なんのことだかわからないから、とりあえず落ち着けって言ってんのに“天沢が、天沢が…”ってなー」
あれは驚いたの通り越して笑えた、なんて課長はまた思い出し笑いをしていたけれど。
あの相良がそんなに慌てていたなんて。
とてもじゃないけど想像がつかなかった。