嘘と微熱と甘い罠
休暇と残業
「まぁ、今日はゆっくり休め。“今日は”な」と。
明日の出社が怖くなりそうな課長からの言葉に苦笑いで返事をし。
長居無用、とばかりに部署を後にしようとしたとき。
聞き慣れた声が耳に届いた。
「戻りましたー」
相良だ。
相良が外回りから戻ってきた。
さっきの出来事が頭を過る。
メールの返事はまだ来てない。
それに加えて、さっき課長から聞いた慌てふためく相良の話。
どうしよう、なんか…顔合わせづらいんですけど…。
そんな私の気持ちなんて気づくはずもない課長。
こんな時ばかり頭が働くらしい。
「相良ー、天沢来てるぞー」
部署内すべての人間に聞こえるんじゃないかってくらい。
それくらい大きな声で相良に呼びかけ。
さらに、私に向かってわざとらしい笑みを浮かべた。
いや、あのね、課長サン。
その「いい仕事しただろ、俺」みたいなドヤ顔、見当外れもいいところです。
いい仕事どころか。
余計なお世話以外の、何物でもありませんから…。