嘘と微熱と甘い罠
「終わったら連絡する」
そう言って相良がミーティングルームを出ていった後。
私は私で明日の予定を確認し、会社から出た。
途中、宣伝部の前を通ったけれど。
笠原さんの姿は見えなくて、声すらも聞こえなかった。
会社を出ると、そこは当然のようにスーツをかっちり着たサラリーマンや。
書類を小脇に抱えたOLが世話しなく歩いている。
…さて、どうしようかな。
今日の私は上司公認のお休み。
まぁ、有給扱いになるだけだろうけどねー。
相良から連絡が来ると思われる時間までまだかなりあって。
外で暇潰しをするには時間がありすぎて、何をしていいかわからなくなりそう…。
でも。
こんな時間は久しぶりだし、これから先にまたあるかどうかも怪しい。
ただただ夜までボーッと過ごしていたら、もったいないオバケがでてきてしまうかも。
「…よしっ!!」
自分に気合いを入れ直すと。
足取り軽く、目的地へと足を進めた。