嘘と微熱と甘い罠
「お忙しいところありがとうございました」
「大した話もできなくて申し訳なかったです」
ペコリ、と頭を下げると。
私より少し年上だと思われる女性が困ったような笑みを浮かべた。
「とんでもないです。飛び込みで伺ったのに、丁寧に対応してくださって大変感謝しております」
「個人的に興味深い話もありましたので、上の者にはきちんと報告させていただきますね」
「では改めてご連絡させていただいてよろしいでしょうか」
「こちらからもご連絡致します」
軽く頭を下げた女性は私と目を合わせると。
今度は販売業らしく、にっこりと可愛らしい笑顔を見せてくれた。
それにつられるように私も口元が緩くなる。
「お時間頂きありがとうございました。具体的な案を持って参りますので、またよろしくお願いいたします」
改めて頭を下げ「失礼します」と言葉にすると。
私はそこを後にした。