嘘と微熱と甘い罠
「…相良ぁ」
「あ?」
「ありがとね」
「…何を今さら」
ふと漏れたように零れた私の言葉。
呆れたようなため息混じりの相良の言葉。
そんな言葉でもなんだかホッとしてしまうのは。
もう誤魔化さないと決めたこの気持ちのせいなのだろうか。
…なんて。
少し前の私だったら思いもしないようなこと。
それがなんだかおかしくて、笑いが漏れそうになった。
「なに笑ってんだよ」
「…別にぃ」
「…あ、そ」
笑いを堪えながらキーボードを叩く手を止める。
隣にいる相良は。
パソコンに向かったまま、ちょっと不貞腐れたように口元を歪ませた。
…と思ったら。
「…なぁ」
「んー?」
「どこまでやったら今日、終わりにすんの?」
その声色はさっきまでとは少し違う。
ちょっと気を抜いたような。
椅子の背もたれに体を預け。
ぐーんと伸びをした相良が言った。