嘘と微熱と甘い罠
「…パソコン、閉じて」
そう告げる相良の声はちょっと掠れてて、でも甘くて。
さらには私の首元に顔を埋めていて。
言葉を発すると、時折唇が触れる。
…ドキドキなんてもんじゃない。
ゾクゾクと沸き上がる熱と共に。
身体の奥の奥がキュウって締め付けられた。
「さ、さが…ら…?」
「まさか、閉じ方忘れたなんて言わねぇよな?」
…なんて。
相良は眉間に薄らシワを寄せながら、そんなこと言ってくれちゃうけど。
違う!! そうじゃない!!
そんな声出して耳元で囁かれてたら。
ドキドキ通り越して心臓がバクバクバクバクしてきちゃって。
うまく手が動かないんだってば!!
現にマウスを操作してる右手は、なんだか小刻みに震えていて。
相良相手の緊張感を否めないのだ。
そんな自分自身を落ち着かせようと。
ひとつ、大きく息を吐いたときだった。
「…穂香」
「…ッ!?」
なかなかパソコンを閉じない私に何かを訴えるように。
相良は首筋に柔らかい感触を落とし始めた。