嘘と微熱と甘い罠

ついさっき。

会社にいたあの時間は、甘い空気に包まれていたはずなのに。

お腹の音が見事にそれを邪魔してくれた。

なんであの状況であんな豪快な音がでるんだろう。

しかもその音を奏でたのは私のお腹。

ほんと空気読めない。

恥ずかしくて憎まれ口をきくことすらままならなくて。

結局そのままパソコンを閉じた。





そして今。

さっきの甘さなんて何処へやらの私たちがいる。





ところで。

なんでシャンパンなんておいてあるんだろ…。

相良も仕事終わりはいつもビールなんだけどな。

そんな疑問を抱きつつも、口をつけるグラスの中身。

ほんのり苦味を含んだいつもと違うアルコール。

いつもと違う微炭酸。

それが“いつもと違う相良と私”を表しているかのように。

シュワーッと体の中心から広がっていった。





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