嘘と微熱と甘い罠
キュッと掴まれたような感覚と。
身体の奥から湧いてくる羞恥の熱が。
どちらともなく私の中を走り回る。
「なっ…んで思い出すのよっ」
「いやー、あれは忘れられねぇ」
「忘れてよっ‼︎」
「むーりー」
「相良のバカッ」
もういやだ。
なんで今。
今、思い出したように言うのよっ‼︎
イジメとしか思えないってば‼︎
「…こういう関係もいいよな」
「え…」
むぅ、と半分いじけモ-ドに入りかけた時。
相良が小さく笑みを混ぜ、言葉を発した。
「笑い合って、言い合いもして。俺、お前とのこーゆー時間…結構気にいってるんだよ」
キラキラと柔らかく光が透け、細かな泡が踊るように上っていく。
そんな手元のグラスに視線をやったまま目を細める相良は。
どこか寂しそうで。
ほんの少し弧を描く口元から言葉が紡がれていく。
私はそんな相良に見入ってしまいながら。
黙って次の言葉を待った。