嘘と微熱と甘い罠
ほんの少しの時間が過ぎる。
それは10秒にも満たない僅かな時間なのだけど。
いつもと何か違う相良に、私の方が落ち着かない。
そんな私に気付くはずもない相良は。
また言葉を発した。
「でも…それじゃもう足らねぇの」
カツン、と音をたててテ-ブルにグラスを置くと。
手を後ろにつき、天井を見上げた。
「俺、お前とただの同期でいたくないし…いられない」
それはさっきとは違う。
苦さに口元を歪ませるような表情を見せたかと思ったら。
そのまま言葉を続けた。
「身体だけ抱いたって満足なんてできない。…お前の中身もまるごと全部、抱きたいんだよ」
ズクン、と。
相良の言葉を追うように身体の奥が揺れた。
“抱きたい”
その言葉を初めて聞いた時とは全然違う。
私の身体の奥の奥から沸いてくる熱を。
相良の言葉は身体中に運んでいった。