嘘と微熱と甘い罠
「で、お前は?」
ゾクゾクするような熱を運ぶ相良の言葉とは裏腹に。
どこかに行ってしまうんじゃないか。
手の届かないところに行ってしまうんじゃないか。
根拠のない何かを感じ、思わず相良に手を伸ばしかけた時。
相良は言葉を続けた。
「え…?」
「良くも悪くも…話、あんだろ?」
「あ…」
口元に緩く笑みを含ませるような話し方。
でもそれは寂しそうにも苦しそうにも見えて。
そんな顔をさせてるのは、私…なんだよね。
そう思ったら、胸の奥がキュッと痛くなった。
「あ、のね…」
「ん?」
ドクン、ドクンと心臓の音が大きくなる。
相良、ごめん。
そんな顔させて、ごめん。
今までほんとにごめん。
ちゃんと言うから、ちゃんと聞いて?
私、相良が…。
「ちょい待て」
「え?」
気持ちを言葉にするため、大きく息を吸い込んだ瞬間。
私の言葉は遮られた。