嘘と微熱と甘い罠
その小さなため息すらも私をチクチクと刺してくる。
地味に刺さる感覚に胸が痛い。
なにが?なんで?を繰り返す私の頭の中を見透かしているかのように。
相良は自身の指先を私の頬に伸ばしツツッと滑らせると。
「…ごめん、言わせようとした」
「え?」
「こんなの…らしくねぇよな」
そう言った。
何を言われるんだろう。
相良は何を言おうとしてるんだろう。
わかるような、わからないような。
わかりたいような、わかりたくないような。
もどかしい、とはまた違う。
言葉では言い表しようのない、なんとも言えない感覚が私の中を動き回り。
そして。
トクン…トクン…と胸の奥がゆっくり動き始める。
「穂香」
私の名前を呼ぶ心地良い声が、耳に滑り込んでくる。
それに合わせて視線が絡む。
そして、相良の唇がその言葉を発した。
その言葉はすごくシンプルだけど、私の胸の奥の方をギュッと掴んだ。
「…好きだ」