嘘と微熱と甘い罠
肩に置かれていた笠原さんの手が。
優しく私の髪を撫でる。
「ごめんな。また休出になっちゃって」
「…そう、ですか…」
そんな申し訳なさそうに言われたら。
私、何も言えないじゃない。
しかも仕事じゃなおさら言えないじゃない…。
そんな私の気持ちなんて気付くはずもなく。
相良は笠原さんに言葉を発した。
「俺だって暇じゃないですよ」
「人事部の女の子とデートか?」
「違います」
「じゃあ行ってこい。先輩命令な」
そうやって笑う笠原さんに。
相良が言った。
「…笠原さん、妬かないでくださいよ」
「ハハッ、どうだろな」
相良の言葉に、フッと。
目を伏せて笑った笠原さんは。
また枝豆に手を伸ばした。