嘘と微熱と甘い罠
「じゃあ、また明日な」
「えっ?」
思わず笠原さんの顔を見る。
久しぶりにゆっくり会えたのに。
こんなあっさり帰るの!?
そんな感情が顔に出ていたのか。
笠原さんが申し訳なさそうな顔を見せた。
「もう一軒付き合いたいところだけど。やらなきゃいけない仕事があるんだわ」
「…仕事、ですか…」
仕事、仕事、仕事。
仕事ばっかり。
なにがそんなに忙しいのよ!!
言ってみろ、コラーッ!!
…なんて。
こんな程度のアルコールじゃ勢いもつかない。
言える、わけがない。
これも惚れた弱味。
ワガママ言って嫌われたくない。
仕事なんだもん、仕方ないよ。