嘘と微熱と甘い罠

「じゃあ、また明日な」

「えっ?」





思わず笠原さんの顔を見る。

久しぶりにゆっくり会えたのに。

こんなあっさり帰るの!?





そんな感情が顔に出ていたのか。

笠原さんが申し訳なさそうな顔を見せた。





「もう一軒付き合いたいところだけど。やらなきゃいけない仕事があるんだわ」

「…仕事、ですか…」





仕事、仕事、仕事。

仕事ばっかり。

なにがそんなに忙しいのよ!!

言ってみろ、コラーッ!!





…なんて。

こんな程度のアルコールじゃ勢いもつかない。

言える、わけがない。

これも惚れた弱味。

ワガママ言って嫌われたくない。

仕事なんだもん、仕方ないよ。




< 39 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop