嘘と微熱と甘い罠

会社近くのイタリアンカフェは。

ランチタイムでもあり、OLさんやらワイシャツ姿の会社員やらで賑わっている。

私たちもその一角に腰を落ち着け、オーダーをすると。

氷とレモンの浮いた涼しげなグラス傾けながら。

相良が口を開いた。





「…土曜日、どうする?」





土曜日?

土曜日って…何かあったっけ?





はて?と首を傾げた私に。

相良がため息を吐いた。





「買い物、行くんだろ?」

「あ…」





そうだった。

笠原さん、休出になっちゃったからって。

相良に代理頼んだんだっけ。





「相良、人事部の子とデートじゃないの?」

「…………………」

「じ、冗談だって…」





昨日の笠原さんの言葉を真似てみただけなのに。

相良の背後に何か真っ黒いものが見えた気がした。



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