嘘と微熱と甘い罠
「昼頃駅前で待ち合わせでいいか?」
「私はかまわないけど…」
相良には予定、なかったのかな。
笠原さんに言われたから予定キャンセルしたとかだったら。
かなーり、申し訳ないんですけど…。
「俺も買い物したいし、んな気にすんな」
何か顔に出てたのか。
相良は手にしているグラスをカラカラ音をたてると。
さっきまでの真っ黒いものはなくなっていて。
代わりに薄らと笑みを浮かべていた。
なんか。
相良にそんな顔されると。
調子狂うんですけど…。
トクン、と小さく鳴った胸の奥。
今なら同期の女の子たちの気持ちが。
ほんの少しだけ。
理解できる気がするよ…。
「夜は飲みに行くか。お前の奢りで」
…うん。
ほんの少しだけ、ね。