嘘と微熱と甘い罠

「昼頃駅前で待ち合わせでいいか?」

「私はかまわないけど…」





相良には予定、なかったのかな。

笠原さんに言われたから予定キャンセルしたとかだったら。

かなーり、申し訳ないんですけど…。





「俺も買い物したいし、んな気にすんな」





何か顔に出てたのか。

相良は手にしているグラスをカラカラ音をたてると。

さっきまでの真っ黒いものはなくなっていて。

代わりに薄らと笑みを浮かべていた。





なんか。

相良にそんな顔されると。

調子狂うんですけど…。





トクン、と小さく鳴った胸の奥。

今なら同期の女の子たちの気持ちが。

ほんの少しだけ。

理解できる気がするよ…。





「夜は飲みに行くか。お前の奢りで」





…うん。

ほんの少しだけ、ね。





< 44 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop