嘘と微熱と甘い罠
「で、どこ行く予定だった?」
「県境のアウトレット、かな」
車を走らせながら聞いてきた相良に私が答える。
遠からず、近からずの距離。
笠原さんと何度か行ったことのあるアウトレット。
たぶん今日もそこに行く予定でいたに違いない。
「だったらちょい遠出して最近オープンしたアウトレット行ってみようぜ」
「えっ!?」
笠原さんに「行きたい」って言ったら。
「遠いからなー」と渋られたのに。
相良はこんなあっさり行くことを決めちゃうんだ…。
「でも、遠いよ?」
「イヤなら行かねぇけど」
「や、行きたい」
「ん。ならおとなしく乗ってナサイ」
そう言って。
相良はドリンクホルダーに差してあったコーヒーを手渡してくれた。