嘘と微熱と甘い罠
「なんでこんなことするのよ!!」
私が頭を叩いたせいもあって。
相良は運転席に戻った。
相良が私に与えたその小さな痛みは。
一度だけじゃなかった。
しかも。
“俺のアトにしてやる”
その言葉の通り。
笠原さんがつけたものに、相良は重ね付けをしたらしく。
ひとつだけの赤いアトは。
いくつかの鮮やかな紅へと変わっていた。
「ムカついたから」
「なにそれ!!意味わかんない!!」
一体何にムカついたっていうの!?
ムカついてるのは私の方だっての!!
訳のわからない相良の言葉に。
もう一発叩いてやろうかと思わず拳を握りかけた時。
相良がまたグイッと迫ってきた。
「な、なによっ!!」
「どういう意味か、後で教えてやるから」
「近い近いっ!!離れてよ!!」
「今はこれでおとなしくしてな」
「んなっ…ッ!!」
近づいてきた相良の唇は。
私の頬に柔らかい感触を落とした。