嘘と微熱と甘い罠
「これ、使いな」
渋滞を抜けてしばらく走ると、目的の場所が見えてきた。
相良は駐車場に車を停めると。
助手席のドアを開けようとした私に。
後部席に投げてあった布をよこした。
「…なにこれ」
「ストール」
いや、それはわかりますけどね…。
渡されたのは確かにストールで。
淡いブルーの優しい色をしている。
「…なんで?」
「見えるから」
そう言って。
相良はトントン、と自身の胸元を指差した。
それは少し前にも見た仕草で。
やっぱりため息混じりの声だった。
いや、確かにお見苦しいものだとは思うけど。
ファンデーション厚塗りすればなんとか誤魔化せるんじゃない?
しかも。
あなた、重ね付けしましたよね?
目立つのはそのせいじゃ…。