嘘と微熱と甘い罠
「…そんなとこで何してんだ?」
現れた人物は。
さっきまで私の隣で仕事をしていた相良。
同期入社の相良 蓮(サガラ レン)だった。
相良とは入社時の研修からずっと一緒で。
配属先まで一緒。
今や担当する仕事まで一緒という腐れ縁。
言い合いもたくさんするけど、何でも言い合えるから仕事もやりやすい。
「デートだって言ってたよな。行かねぇの?」
私の横を通りすぎ。
自販機に小銭を入れながら相良が話しかけてくる。
「うーん…」
私の煮え切らない返事に。
ガコン、と音をたてた自販機からコーヒーを取り出すと。
相良がため息混じりに言葉を吐いた。
「…ひょっとして、また?」