嘘と微熱と甘い罠
「買い物もできたし、ビールは美味しいし。言うことないね」
相良は元々気の許せる同僚。
湧いてきた疑問もどうでもよくなってしまい。
すっかりリラックスモードに入っていた。
「誰かさんは睡眠欲まで満たされたしな」
「…う、るさいっ」
「もう1本取ってくる。お前は?」
「飲む!!」
「了解」
からかうような相良の声に。
ビールの缶を持ったまま。
私はプイッとそっぽを向いた。
そんなとき。
頭にふとよぎったのは、笠原さん。
笠原さん、仕事終わったかな…。
買い物行って。
私は相良の部屋でしっかり家飲みしちゃってるけど。
休出なんだから残業まではないはず。
帰ってきたら会えるか聞いておけばよかったな…。
無意識に手に持っていた缶に力が入ったら。
ペコッと、軽く缶がへこんだ音がした。