嘘と微熱と甘い罠
「…今、なに考えてた?」
「あ…」
目の前に置かれた缶ビール。
いつの間にか相良はテーブルに戻ってきていて。
角を挟んで私の隣に座っていた。
「…笠原さん?」
「うん。もう仕事終わったかなって」
私の言葉に。
相良がひとつ、ため息を吐いた。
そして。
相良はゆっくりと指先を伸ばしてきた。
「…今まで忘れてたんだから、そのまま忘れてりゃいいのに」
伸ばされた指先は。
私の頬に触れる。
そして頬から唇、唇から首筋、鎖骨へと相良の指先は移動していく。
そして。
「…ッ…」
その指先が胸元に触れたとき。
相良が私と視線を合わせた。
「…さっきの続き、しようか」
“男”の顔になった相良に。
私の身体の中心がズクン、と揺れた。