嘘と微熱と甘い罠
相良は私を“抱きたい”と言った。
そのときすでに私と相良は。
“友達”じゃなくて。
“男と女”だったんだ。
胸元に残された紅は。
相良からの警告。
でも私はそれに気付かないで相良の作った流れにのってしまった。
…ううん。
ホントは気付いてた。
頬に触れた唇も。
絡めた指先も。
手のひら越しのキスも。
驚いたけどイヤじゃなかったから。
“私には笠原さんがいる”って。
あれは相良に対して言ったんじゃなくて。
自分自身に言い聞かせるように笠原さんの話を口にしたんだ。
…そんなことを思った私は。
あの時点で。
相良とこうなることを予感していたに違いない。
それをわかってて相良の部屋に来たのなら。
私に抗う術なんてあるはずがない。