嘘と微熱と甘い罠

相良は私を“抱きたい”と言った。

そのときすでに私と相良は。

“友達”じゃなくて。

“男と女”だったんだ。





胸元に残された紅は。

相良からの警告。

でも私はそれに気付かないで相良の作った流れにのってしまった。





…ううん。

ホントは気付いてた。





頬に触れた唇も。

絡めた指先も。

手のひら越しのキスも。

驚いたけどイヤじゃなかったから。





“私には笠原さんがいる”って。

あれは相良に対して言ったんじゃなくて。

自分自身に言い聞かせるように笠原さんの話を口にしたんだ。





…そんなことを思った私は。

あの時点で。

相良とこうなることを予感していたに違いない。

それをわかってて相良の部屋に来たのなら。

私に抗う術なんてあるはずがない。



< 90 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop