嘘と微熱と甘い罠

逸らされた視線。

身体を這い回っていた指先も動きが止まる。





「さ、がら…?」





熱は冷めない。

私は自分から相良の頬に手を伸ばした。

ほんのり赤く染まった横顔は熱を含んでいる。

逸らされた視線は何を見ているんだろう。





「相良…?」





もう一度、相良を呼んだ。

すると。

相良は苦しそうな表情を見せ。

私の頬に右手を添えた。





「…んな顔されたら、止められるもんも止まらなくなるっつーの…ッ」

「ん…やッ…!!」





言葉の後。

服の中で動かなくなっていた指先が。

指先だけじゃ足らないと、手のひら全部で触れてきた。





違う、焦らされてたんじゃない。

躊躇してたんだ。





それに気づいたのは。

「いまさら“待って”とかなしだからな」と。

熱を含ませた目で念押しをし。

服の乱れた私を抱き抱え、隣の寝室へと歩を進めた。






< 92 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop